KEMBAR78
JPA2023_NetworkTutorial_Part1.pdf
縦断デザインにおける
「データ」と「分析」
菅原 大地
(筑波大学)
sugawara@human.tsukuba.ac.jp
日本心理学会第87回大会 2023年9月15-17日
TWS-015 心理ネットワークアプローチ入門
縦断データ解析を中心に
・ 自己紹介とネットワーク分析の面白さ
・「データ」のデザイン
・「分析」のデザイン
・「データ」と「分析」の関係
流れ
自己紹介とネットワーク分析の面白さ
自己紹介
最近の関心:心理療法のダイナミクス
・心理ネットワークに関する論文
・ネットワーク分析・思考を活用する心理療法
(プロセス・ベースド・セラピー)
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介入前 介入後
抑
う
つ
症
状
時間の経過
心の構造
… …
介入前 介入後
ネットワーク分析と臨床
ネットワーク分析と臨床に活かす
・アセスメント
・作用機序
・コミュニケーション などなど
http://ibaseishin.com/nichiseishin2023/
N=1 ネットワーク分析
https://journals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.0162811&type=printable
統合失調症患者の症状の変動
「データ」のデザイン
縦断ネットワーク分析の前に
内容:「データ」と「分析」の関連づけ
Chapter 9
Longitudinal Design Choices:
Relating Data to Analysis
・縦断ネットワーク分析を実行する前
のお話(前提)
→データと分析の「デザイン」から
学んでいく
→時間的な変化を含むデータや分析
全般に関わるお話
データも分析も様々
データ
質問紙
調査
実験 生体データ
経験
サンプリング
分析
様々なデータや分析を,
時間や人といった次元で「タイプ」分けする
因子分析
分散分析
構造方程式
モデリング 時系列解析
データのデザイン
単一測定データ N = 1 時系列データ
N > 1 時系列データ
…
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People
…
時間(Time)
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People
時間(Time)
…
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5
People
時間(Time)
…
…
…
…
パネルデータ
「横断?」「単一測定?」
単一測定データ ≠ 横断的データセット
横断的データセット
→特定の瞬間を切り出した横断面
=別の切り取り方がありえる
単一測定データ
→1名につき,1個の観測値しかそもそも
入手できないデータも含まれる
N = 1 時系列データ
単一測定データ N = 1 時系列データ
N > 1 時系列データ
…
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People
…
時間(Time)
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People
時間(Time)
…
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People
時間(Time)
…
…
…
…
パネルデータ
単一測定データ N = 1 時系列データ
N > 1 時系列データ
…
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People
…
時間(Time)
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People
時間(Time)
パネルデータ
…
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People
時間(Time)
…
…
…
…
パネルデータとN>1 時系列データ
単一測定データ N = 1 時系列データ
N > 1 時系列データ
…
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People
…
時間(Time)
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People
時間(Time)
パネルデータ
…
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People
時間(Time)
…
…
…
…
パネルデータとN>1 時系列データ
パネルデータとN>1 時系列データの良さ
→個人内効果と個人間効果を分けられる
「分析」のデザイン
横断的分析 個人内分析
固定効果分析
…
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People
…
時間(Time)
3
時間(Time)
People
…
…
個人間分析
時間(Time)
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分析のデザイン
横断的分析の欠点
・数名の人に,特定の同一の瞬間に得られた
データ(例えば,一回の調査研究)
→個人間効果と個人内効果を区別できない
例)「コーヒーを飲む量」と「文章の執筆量」に正の相関
>
個人間効果
>
コーヒーを
いっぱい
飲む人たち
コーヒーを
あまり
飲まない人たち
普段は
そんなに
飲まない
普段より
コーヒーを
飲んだ
個人内効果
横断的分析 個人内分析
固定効果分析
…
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People
…
時間(Time)
3
時間(Time)
People
…
…
個人間分析
時間(Time)
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分析のデザイン
個人間分析と個人内分析
個人間分析≠横断的分析
「検討対象となっている人々のなかで,
時間が経過しても安定している要素」を
取り出して,要素間の関連を検討する
例)コーヒーの飲む量が多い人は
少ない人よりも執筆量↑
個人内分析
ある特定の個人について反復測定を
行った際の変数の分散を検討する
例)コーヒーを飲んだ日に執筆量↑
→特定の個人1名から得られた観測値
の内部での関係
横断的分析 個人内分析
固定効果分析
…
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People
…
時間(Time)
3
時間(Time)
People
…
…
個人間分析
時間(Time)
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分析のデザイン
固定効果分析
固定効果分析
・時間ではなく,人々からのサンプリングという要素を
ならしたもの
→「平均的な人」における個人内の関連
・(仮想される)平均的な人の平均からの偏差同士の関連
→「平均的な人」は実在しない
個人内分析として解釈してよいかは議論が分かれる
←特定の1名
「データ」と「分析」の関係
データと分析の関連
1対1対応しているわけではない!
そもそも,どんなデータなの?
測定したデータは,何を反映していますか?
・安定した特性を測ろうを思って質問をした!
例)「平均的にみて,コーヒーをよく飲みますか?」
→安定した側面を測ろうとしていれば,
その時の回答者の状態が反映されてしまう
・個人に,平均値からの偏差を尋ねることもできるが,
まだ一般的な方法ではない
例)「今日は平均より多くコーヒーを飲みましたか?」
タイムフレーム
そのタイムフレームで個人内相関しそう?
ストレス
不安
時間(Time)
ガン
喫煙
時間(Time)
分析を選択する鍵と気にすること
質問の仕方を工夫する(気を遣う)
・安定した特性を測ろうとしているのか,
状態的に変化するものと測ろうとしているのか?
・いつから,いつまでのことを尋ねているのか?
そもそも測定したいものの特徴は何?
・変化するものなの?
・どれくらい安定しているの?
どんな分析をするかは,データセットの中身次第
同時性効果と経時的効果を分ける
グラフィカル・ベクトル自己回帰(GVAR)
・同時性効果のモデルを進め,ガウシアン・
グラフィカルモデルとして表現したもの
経時的ネットワーク(経時的効果)
→経時的関係が集まって出来る有向ネットワーク
同時性ネットワーク(同時性効果)
→同時性関連が集まってできる無向ネットワーク
GVARモデルを用いた研究
N > 1データであれば個人間効果も検討可能
経時的ネットワーク 同時性ネットワーク 個人間ネットワーク
https://www.nature.com/articles/s41598-022-14901-8
まとめ
・ データと分析には4つのタイプがある
・どのような分析をするのがよいかは,
データの中身に依存する
・GVARモデルを用いると
①経時的ネットワーク
②同時性ネットワーク が得られる
引用文献
・Bak, M., Drukker, M., Hasmi, L., & van Os, J. (2016). An n=1 Clinical
Network Analysis of Symptoms and Treatment in Psychosis. Plos one, 11(9),
e0162811. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0162811
・O'Driscoll, C.; Epskamp, S.; Fried, E.I. et al.(2022). Transdiagnostic
symptom dynamics during psychotherapy. Scientific Reports 12, 10881.
https://doi.org/10.1038/s41598-022-14901-8

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